p.058 仏説無量寿経巻下 目次 // 前頁 / 次頁

寿楽極まりあることなし。
然るに世人、薄俗にして共に不急の事を諍う。この劇悪極苦の中において身の営務を勤めて、もって自ら給済す。尊もなく卑もなし。貧もなく富もなし。少長男女共に銭財を憂う。有無同然なり。憂思適に等し。屏営愁苦して、念いを累ね慮りを積みて、心のために走せ使いて、安き時あることなし。田あれば田を憂う。宅あれば宅を憂う。牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・什物、また共にこれを憂う。思いを重ね息を累みて、憂念を愁怖す。横に非常の水火・盗賊・怨家・債主のために焚漂劫奪せられ消散し摩滅す。憂毒 として解くる時あることなし。憤りを心中に結びて憂悩を離れず。心堅く意固く、適に縦捨することなし。あるいは摧砕に坐して、身亡び寿終われば、これを棄捐して去りぬ。誰も随う者なし。尊貴豪富もまたこの患えあり。憂懼万端にして勤苦かくのごとし。もろもろの寒熱を結びて痛みと共に居す。貧窮下劣にして困乏して常に無けたり。田なければまた憂えて田あらんと欲う。宅なければまた憂えて宅あらんと欲う。牛馬六畜・奴婢