相承受するに、父、教令を余す。先人・祖父素より善を為さず。道徳を識らず。身愚かに神闇く、心塞り意閉じて、死生の趣、善悪の道、自ら見ること能わず。語る者あることなし。吉凶禍福、競いておのおのこれを作す。一も怪しむものなきなり。生死の常の道、転た相嗣ぎ立つ。あるいは父は子を哭し、あるいは子、父を哭す。兄弟・夫婦、かわるがわる相哭泣す。顛倒上下して無常の根本なり。みな過去に当く。常に保つべからず。教語開導すれどもこれを信ずる者は少なし。ここをもって生死流転し、休止することあることなし。かくのごときの人、曚冥抵突して経法を信ぜず。心に遠き慮りなし。おのおの意を快くせんと欲えり。愛欲に痴惑せられて道徳を達らず。瞋怒に迷没して財色を貪狼す。これに坐して道を得ず。当に悪趣の苦に更るべし。生死窮まり已むことなし。哀れなるかな。甚だ傷むべし。ある時は室家・父子・兄弟・夫婦、一は死し一は生ず。かわるがわる相哀愍す。恩愛思慕して憂念結縛す。心意痛着して迭いに相顧恋す。日を窮め歳を卒えて解け已むことあることなし。道徳を教語するに心開明な