p.069 仏説無量寿経巻下 目次 // 前頁 / 次頁

れに坐して滅ぶ。ある時は室家・知識・郷党・市里・愚民・野人、転た共に事に従いて更いに相利害す。忿り怨結と成り、あるに富みて慳惜す。肯て施与せず。愛宝貪重にして、心労し身苦しくす。かくのごとくして竟りに至りて恃怙するところなし。独り来り独り去りて、一も随う者なけん。善悪・禍福、命を追いて生ずるところなり。あるいは楽処にあり、あるいは苦毒に入る。然るに後に乃し悔ゆとも当にまた何ぞ及ぶべき。世間の人民、心愚かにして智少し。善を見ては憎謗し、慕い及ぶことを思わず。但し悪を為さんと欲うて妄りに非法を作す。常に盗心を懐きて他の利を 望す。消散し糜尽してまた求索す。邪心にして正しからず。人の色ることあるを懼る。予め思い計らず。事至りて乃し悔ゆ。今世に現に王法の牢獄あり。罪に随いて趣向してその殃罰を受く。その前世に道徳を信ぜず、善本を修せざるに因りて今また悪を為れば、天神剋識してその名藉を別つ。寿終わり神逝きて悪道に下り入る。かるがゆえに自然の三塗無量の苦悩あり。その中に展転して世世累劫に出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み