p.040 仏説無量寿経巻上 目次 // 前頁 / 次頁

仏、阿難に告げたまわく、「たとえば世間に貧窮乞人の、帝王の辺にあらんがごとし。形貌容状、むしろ類すべけんや。」阿難、仏に白さく、「たといこの人、帝王の辺にあらんに、羸陋醜悪にして、もって喩えとすることなけん。百千万億不可計倍ならん。然る所以は、貧窮乞人は底極廝下にして、衣、形を蔽さず。食、趣に命を支う。飢寒困苦して、人理殆と尽きなんとす。みな、前世に徳本を植えず、財を積みて施さず、有るに富みて益す慳み、但、唐らに得んと欲うて貪求して厭うことなし、肯て善を修せず、悪を犯すこと山のごとく積もるに坐してなり。かくのごとくして寿終え、財宝消散して、身を苦しましめて聚積して、これがために憂悩すれども己において益なし。徒らに他の有と為る。善として怙むべきなし。徳として恃むべきなし。このゆえに死して悪趣に堕して、この長苦を受く。罪畢りて出ずることを得て、生まれて下賎と為りて愚鄙廝極にして、人類に示同す。世間に帝王の、人中に独尊なる所以は、みな宿世に徳を積めるによりて致すところなり。慈恵博く施し、仁愛兼ねて済う。信を履み善を修して、違諍