p.408 浄土文類聚鈔 目次 // 前頁 / 次頁

願成就の文、『経』に言えり、「かの国の菩薩は、みな当に一生補処を究竟すべし。その本願の、衆生のためのゆえに弘誓の功徳をもってして自ら荘厳し、あまねく一切衆生を度脱せんと欲わんをば除かんと。」已上
聖言、明らかに知んぬ。大慈大悲の弘誓、広大難思の利益なり、いまし煩悩の稠林に入って諸有を開導す、すなわち普賢の徳に遵うて群生を悲引す。
しかれば、もしは往・もしは還、一事として如来清浄の願心の回向成就したまうところにあらざることあることなきなり。知るべし。
ここをもって、浄土縁熟して、調達、闍王、逆害を興ず、濁世の機を憫んで、釈迦、韋提(をして)安養を選ばしめたまうなり。つらつら彼を思い、静かに此を念うに、達多・闍世、博く仁慈を施し、弥陀・釈迦、深く素懐を顕せり。これに依って、論主、広大無碍の浄信を宣布し、あまねく雑染堪忍の群生を開化せしむ。宗師、往還大悲の回向を顕示して、慇懃に他利・利他の深義を弘宣せり。聖権の化益、ひとえに一切凡愚を利せんがため、広大の心行、ただ逆悪闡提を引せんと欲してなり。