p.409 浄土文類聚鈔 目次 // 前頁 / 次頁

いま庶わくは道俗等、大悲の願船は清浄信心をして順風とす、無明の闇夜には功徳の宝珠をして大炬とす。心昏くして識寡なきものは、敬んでこの道を勉めよ。悪重く障多きものは、深くこの信を崇めよ。ああ、弘誓の強縁、多生にも値い難く、真実の浄信、億劫にも獲 し。遇信心を獲ば遠く宿縁を慶べ、もしまたこのたび疑網に覆蔽せられなば、更って必ず曠劫多生を径歴せん。摂取不捨の真理、超捷易往の教勅、聞思して遅慮することなかれ。慶ばしきかな、愚禿、仰いで惟いみれば、心を弘誓の仏地に樹て、情を難思の法海に流す。聞くところを嘆じ、獲るところを慶んで、真言を探り集め、師釈を鈔出して、専ら無上尊を念じて、特に広大の恩を報ず。
これに因って、曇鸞菩薩の『註論』を披閲するに、言わく、「それ菩薩は仏に帰す、孝子の父母に帰し、忠臣の君后に帰して、動静己にあらず、出没必ず由あるがごとし。恩を知りて