<第四首>
無慚無愧のこの身にて
まことのこころはなけれども
弥陀の回向の御名なれば
功徳は十方にみちたまう
<第五首>
小慈小悲もなき身にて
有情利益はおもうまじ
如来の願船いまさずは
苦海をいかでかわたるべき
<第六首>
蛇蝎奸詐のこころにて
自力修善はかなうまじ
如来の回向をたのまでは
無慚無愧にてはてぞせん
<第七首>
五濁増のしるしには
この世の道俗ことごとく
外儀は仏教のすがたにて
内心外道を帰敬せり
<第八首>
かなしきかなや道俗の
良時吉日えらばしめ
天神地祇をあがめつつ
卜占祭祀つとめとす
<第九首>
僧ぞ法師のその御名は
とうときこととききしかど
提婆五邪の法ににて
いやしきものになづけたり
<第十首>
外道梵士尼乾志に
こころはかわらぬものとして
如来の法衣をつねにきて
一切鬼神をあがむめり
<第十一首>
かなしきかなやこのごろの
和国の道俗みなともに
仏教の威儀をもととして
天地の鬼神を尊敬す
<第十二首>
五濁邪悪のしるしには
僧ぞ法師という御名を
奴婢僕使となづけてぞ
いやしきものとさだめたる
<第十三首>
無戒名字の比丘なれど
末法濁世の世となりて
舎利弗目連にひとしくて
供養恭敬をすすめしむ
<第十四首>
罪業もとよりかたちなし
妄想顛倒のなせるなり
心性もとよりきよけれど
この世はまことのひとぞなき
<第十五首>
末法悪世のかなしみは
南都北嶺の仏法者の
輿かく僧達力者法師
高位をもてなす名としたり