諸の杖棰を加へらる。但水・草を念ひて、餘は知る所無し。又蚰・蜒・鼠・狼等は、闇の中に生じて闇の中に死す。蟣蝨・蚤等は、人の身に依りて生じ還人に依て死す。又諸の龍の衆は、三熱の苦を受けて晝夜に休むこと無し。或は復蟒蛇は其の身長大なれども、聾騃にして足無く、宛轉腹行して、諸の小虫の爲に唼ひ食はらる。或は復一毛の百分の如きもの、或は窓中の遊塵の如きもの、或は十千由旬の如きもの有り。是の如き諸の畜生は、或は一時の頃或は七時の頃を經、或は一劫乃至百千万億劫に無量の苦を受くる有り。或は諸の違縁に遇ひて、數々殘害せらる。此等の諸の苦、勝げて計ふべからず。愚癡無慙にして、徒に信施を受け、他の物を償はざりし者、此の報を受く。已上諸文、經論に散在せり
[一、厭離穢土 修羅]
第四に阿修羅道を明さば、二有り。根本の勝れたる者は、須彌山の北、巨海の底に住し、支流の劣れる者は、四大州の間、山巖の中に在り。雲雷若し鳴れば、是天の鼓なりと謂ひて怖畏周章し、心大きに戰き悼む。亦常に諸天の爲に侵害せらる。或は身體を破り、或は其の命を夭す。又日日三時に、苦具自ら來りて逼り害し、種種に憂ひ苦しむ。勝げて説くべからず
[一、厭離穢土 人間]
第五に人道を明さば、略して三の相有り、應に審かに觀察すべし。一には不淨の相、二には苦の相、三には無常の相なり。
[一、厭離穢土 人間 不淨]
一に不淨とは、凡そ人の身の中には、三百六十の骨有りて、節と節と相拄ふ。謂く指の骨は足の骨を拄へ、足の骨は踝の骨を拄へ、踝の骨はの骨を拄へ、の骨は膝の骨を拄へ、膝の骨は䏶の骨を拄へ、䏶の骨は臗の骨を拄へ、臗の骨は腰の骨を拄へ、腰の骨は背の骨を拄へ、背の骨は勒の骨を拄ふ。復背の骨は項の骨を拄へ、項の骨は頷の骨を拄へ、頷の骨は牙齒を拄へ、上に髑髏有り。復項の骨は肩の骨を拄へ、肩の骨は臂の骨を拄へ、臂の骨は腕の骨を拄へ、腕の骨は掌の骨を拄へ、掌の骨は指の骨を拄ふ。是の如く展轉して、次第に鎖のごとく成れり。『大論』