薬あればとて毒をこのむべからず
念仏者は無碍の一道・碍り無き道と聞かせていただきますと、それではどんな悪いこと でも仕放題なのかと言いだすのが私どもの横着さであります。 このような不心得に対して心を痛められた宗祖・親鷺聖人が懇に誡められたおことばで あります。如来のみ教えに遇うたればこそ我が身の悪に気付かれたのであり、煩悩に狂わ されていく私をこの上なく痛ましく思うてくださるみ仏のお心をいただくならば、ひたす ら懺悔せずには居れないのであります。このうえなお横着に振舞うというのはまさしく親 の心子知らずというものでありましょう。 無明の酒に酔うた人にさらに酒をすすめ、三毒を好み喰う人にいよいよ毒を許して好め という法があろうかと誠められる聖人の厳しいお言葉のかげに切々たる大悲を仰がずに居 られないのであります。 1970年9月2006年8月5日