p.506 正像末和讃 目次 // 前頁 / 次頁

<第五首>
転輪王の王子の
皇につみをうるゆえに
金鎖をもちてつなぎつつ
牢獄にいるがごとくなり

<第六首>
自力称名のひとはみな
如来の本願信ぜねば
うたがうつみのふかきゆえ
七宝の獄にぞいましむる

<第七首>
信心のひとにおとらじと
疑心自力の行者も
如来大悲の恩をしり
称名念仏はげむべし

<第八首>
自力諸善のひとはみな
仏智の不思議をうたがえば
自業自得の道理にて
七宝の獄にぞいりにける

<第九首>
仏智不思議をうたがいて
善本徳本たのむひと
辺地懈慢にうまるれば
大慈大悲はえざりけり

<第十首>
本願疑惑の行者には
含花未出のひともあり
或生辺地ときらいつつ
或堕宮胎とすてらるる

<第十一首>
如来の諸智を疑惑して
信ぜずながらなおもまた
罪福ふかく信ぜしめ
善本修習すぐれたり

<第十二首>
仏智を疑惑するゆえに
胎生のものは智慧もなし
胎宮にかならずうまるるを
牢獄にいるとたとえたり

<第十三首>
七宝の宮殿にうまれては
五百歳のとしをとしをへて
三宝を見聞せざるゆえ
有情利益はさらになし

<第十四首>
辺地七宝の宮殿に
五百歳までいでずして
みずから過咎をなさしめて
もろもろの厄をうくるなり

<第十五首>
罪福ふかく信じつつ
善本修習するひとは
疑心の善人なるゆえに
方便化土にとまるなり

<第十六首>
弥陀の本願信ぜねば
疑惑を帯してうまれつつ
はなはすなわちひらけねば
胎に処するにたとえたり