佛道成ずるに至るまで六根淸徹す。樹の下には座有り、莊嚴無量なり。座の上には佛有まし、相好無邊なり。烏瑟高く顯れ、晴天の翠濃く、白毫右に旋りて秋月の光滿つ。靑蓮の眼、丹菓の脣、迦陵頻の聲、師子相の胸、仙鹿王の膊、千輻輪の趺、是の如きの八万四千の相好は、紫磨金身に纏絡し、無量塵數の光明は、億千の日月を集めたるが如し。有る時は七寶の講堂に在りて、妙法を演暢したまふに、梵音深妙にして、衆の心を悅可せしめたまふ。菩薩・聲聞・天・人・大衆、一心に合掌して尊顏を瞻仰す。即の時に自然の微風七寶の樹を吹き、無量の妙華風に隨ひて四散す。一切の諸天は諸の音樂を奏す。斯の時に當りて、煕怡快樂、勝げて言ふべからず。或は復廣大の身を現じ、或は丈六・八尺の身を現じ、或は寶樹の下に在り、或は寶池の上に在り。衆生の本の宿命により求道の時心に憙み願ひし所に隨ひ、大小意に隨ひて、爲に經法を説き、其をして疾く開解し得道せしむ。是の如くに種種の機に隨ひて、種種の法を説きたまふ。又觀音・勢至の兩菩薩は、常に佛の左右の邊に在りて、坐し侍りて政論す。佛常に是の兩菩薩と共に對坐して、八方・上下、去來・現在の事を議したまふ。或時は東方恒沙の佛國の無量無數の諸の菩薩衆、皆悉く無量壽佛の所に往詣し、恭敬し供養し、諸の菩薩・聲聞の衆に及ぼさん。南西北方・四維・上下も亦復是の如し。彼の嚴淨の土の微妙にして思議し難きを見て、因て無量の心を發して、我が國も亦然らんと願ふ。時に應じて世尊、容を動かして微咲し、口より無數の光を出して、遍く十方の國を照らす。回光身を圍ること三帀して頂に入る。一切の天人衆、踊躍して皆歡喜す。大士觀世音、服を整へ稽首して佛に問ひたてまつる。何に縁りてか咲みたまふこと唯然るや。願はくは説きたまへと。時に梵聲雷の猶く、八音もて妙響を暢べたまひ、當に菩薩に記を授くべしと。告げて言はく。仁諦かに聽け、十方より來れる正士、吾悉く彼願を知れり。