十善業を以て、往生の業と爲すなり。「受持三歸」といふは、佛・法・僧に歸依するなり。此に就て二有り。一には大乘の三歸、二には小乘の三歸なり。「具足衆戒」といふは、此に亦二有り。一には大乘戒、二には小乘戒なり。「不犯威儀」といふは、此に亦二有り。一には大乘、謂く八万有り。二には小乘、謂く三千有り。「發菩提心」といふは、諸師の意不同なり。天台には即ち四敎の菩提心有り、謂く藏・通・別・圓是なり。具に『止觀』に説くが如し。眞言には即ち三種の菩提心有り、謂く行願・勝義・三摩地是なり。具は『菩提心論』の説くが如し。華嚴に亦菩提心有り。彼の『菩提心義』及び『遊心安樂道』等に説くが如し。三論・法相に各々菩提心有り。具に彼の宗の章疏等に説くが如し。又善導所釋の菩提心有り。具に『疏』に述ぶるが如し。發菩提心、其の言一なりと雖も、各々其の宗に隨ひて其の義不同なり。然れば則ち菩提心の一句、廣く諸經に亙り、徧く顯密を該す。意氣博遠にして、詮測沖邈なり。願はくは諸の行者、一を執りて万を遮すること莫れ。諸の往生を求むる人、各々須く自宗の菩提心を發すべし。縱ひ餘行無しと雖も、菩提心を以て往生の業と爲すなり。「深信因果」といふは、之に付て二有り。一には世間の因果、二には出世の因果なり。世間の因果といふは、即ち六道の因果なり。『正法念經』に説くが如し。出世の因果といふは、即ち四聖の因果なり。諸の大小乘經に説くが如し。若し此の因果の二法を以て、徧く諸經を攝せば、諸家不同なり。且く天台に依らば、謂く華嚴には佛・菩薩二種の因果を説き、阿含には聲聞・縁覺二乘の因果を説き、方等の諸經には四乘の因果を説くなり、般若の諸經には通・別・圓の因果を説き、法華には